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高分子機能物性分野

近年、ソフトマテリアルと呼ばれる物質(複雑液体と呼ばれることもある)の科学が非常に注目を集めています。ソフトマテリアルとは、高分子、ゲル、液晶、コロイドなどの柔らかい物質の総称です。ソフトマテリアルの重要な特徴は、通常の固体よりも弾性率がずっと小さく、非常にゆっくりとしたダイナミックスが現れることです。このような特徴を有するソフトマターは、学問的に興味深い研究対象だけであるだけでなく、工業的応用の観点からも非常に応用範囲が広い材料です。

本研究室では、主としてレオロジー的手法を用い、高分子液体、高分子ゲル、高分子ブレンド、生体軟組織などの高分子系ソフトマテリアルの物理化学的および力学的性質を詳しく調べています。

教員

  • 教授:瀧川 敏算 
  • 准教授:堀中 順一

研究内容

高分子レオロジー

レオロジーとは物質の流動と変形の学問です。高分子物質はそれを構成する分子が鎖状に長いために、低分子物質には見られない多くの興味ある力学的性質を示します。例えば、多くの高分子物質は、粘性と弾性を合わせ持つ、すなわち粘弾性を示します。高分子粘弾性体の研究は、レオロジーの大きい部分を占めています。この研究は、高分子鎖の運動や配向とレオロジー的性質を結び付ける極めて基礎的な学問の発展に寄与しているのみならず、高性能高分子材料の創造と、その性能評価にも大きく役立ちます。

研究対象としては、ポリスチレンなどのモデル高分子材料をはじめ、液晶性高分子材料、ABS樹脂等の不均質系高分子材料、固体粒子充填系高分子材料などあらゆる高分子材料の溶融物と固体を取り扱っています。それらの動的粘弾性、線形および非線形領域における応力緩和、せん断変形(流動)、1軸及び2軸伸長変形(流動)など多様な変形(流動)様式でのレオロジー測定をおこなっています。これらの研究は、学術的のみならず高分子材料の成形加工の基礎研究として工業に大きく寄与しています。

高分子ゲルおよびエラストマーの物理化学

我々のまわりにある食品には"ゲル"と言われるものが多く見られます。例えば、こんにゃくやゼリーなどは天然高分子でできたゲルです。生体の大部分を占める軟組織もまた一種のゲルと考えることができます。

ゲルはそのなかに溶媒(多くの場合水ですが)を含みますが、溶媒は通常の状態では外に出ることはありません。この良好な保水性を利用して、ゲルは種々の用途に使用されています。また、ある種の高分子ゲル(高分子網目と溶媒からなるゲル)では、温度などの外部環境の微小な変化で、含水率が急激に変化することがあります。この特異な感温特性を利用して、医薬分野ではDDS基材として使用されつつあります。

一方、温度等の微小な変化により、ゲルの含水率が不連続に変わる現象は、熱力学的な相転移現象として取り扱えることが明らかになり、高分子物理化学の対象としてもゲルは大変注目を集めています。

本研究の目的は、高分子ゲルの平衡膨潤挙動および膨潤の動力学を明らかにすることにあります。現在は、種々の変形下にある高分子ゲルの平衡膨潤挙動と膨潤過程での膨潤度および応力の時間変化に関する研究をおこなっています。また、ゲルだけでなく架橋エラストマーなどをも含む高分子網目系の弾性挙動に関しても研究を進めています。

生体軟組織の力学物性的特性解析

生体の組織が、けがや疾病で大きな損傷を受けたときには、損傷部位を速やかに置換することが必要になります。現在、この軟組織の置換には、生化学的な生体適合性に優れた人工生体材料が用いられています。しかしながら、現在使用されている人工材料の多くは、生化学的な生体適合性には優れていても、力学的な生体適合性までは考慮されていません。

例えば、現在実用化されている人工血管は抗血栓性には優れているものの、生体の血管とは弾性率、強度などが大きく異なっているため、吻合部が血栓により閉塞するなどの問題が生じています。このように、人工生体材料の臨床応用には力学的な生体適合性に関する研究が不可欠となっています。

本研究室では力学的な生体適合性に関する研究の基礎となる生体組織の力学物性を詳細に調べています。また、最近注目を集めている再生組織工学の基礎として、組織再生の過程を力学的な手法により研究しています。